窪美澄『夏日狂想』を読む。

窪美澄作品。読むのは2冊目かな。この本は380頁にわたって詩人中原中也がモデルと思われる天才詩人水本と子供の頃から器量よしと言われて女優を目指した礼子との恋愛を主軸に礼子の男遍歴と女優から文筆家へと変遷していく過酷な人生が描かれる。

読み応えたっぷりだ。

『夏日狂想』

礼子の人生は実業家で進取に富んだ父の溺愛を受けて「器量よし」と「作文がうまい」と育てられたが父の急死。青空詩人川島の援けをかりて逃げ出して大部屋女優としてスタートする。自由思想の礼子には大役は回ってこない。そんな時熱狂的とも天才的ともいえる16歳の詩人水本と恋愛関係に。水本の友達翻訳家滝沢の療養と死と。水本に疲れて片岡との恋愛。そして東京大震災と戦争と空襲の間に作家橘との生活で心安らかな生活で乗り切るのだが・・。礼子は水本の詩はいずれ必ず世に出ると思い、橘の小説も必ずいつか売れると信じていた。礼子もまた水本や橘に才能を信じられて書くことをやめなかった。自らのこれまでの思いを小説にするのだが・・・・。

(礼子の女優から小説家そして少女雑誌への投稿そして掃除婦などの生活の変化と礼子に群がった男たち。新しい女性として送った波乱の人生が描かれる。)

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