鳥越碧『漱石の妻』を読む。

鳥越碧作品。子規とか一葉とか描いた鳥越作品の内の1作品。妻の立場から日本の文豪といわれる漱石の家庭の内情や妻の心情が描かれている。悪妻・愚妻・荊妻と漱石が偉大な文豪故の対比が気の毒と言えないこともないが漱石は50歳までしか生きられなかったのに妻は80歳過ぎまでしっかり生きた。

漱石の妻』

熊本などの帝国大学で教鞭をとっていた漱石に官僚だった中根家の長女だった鏡子が嫁いだのだが小学校しかでていないなかった。潔癖症漱石に対して裕福な家に生まれて大らかに楽天的に育った鏡子は漱石が初恋の人である。性格の違いや教養の違いが明白だったのだが・・・。生徒には優しく人気もあった先生だったがロンドン留学当時から文芸の道に興味をもった。正岡子規とは親友で子規は天才・自分は秀才という仲であった。一匹の野良ネコを飼うようになって書いた「吾輩は猫である」がヒットし帝大の教授を蹴って小説家の道を歩む。しかし生活は火の車であった。妻の実家も没落し窮乏状態。子供は2男4女と結婚生活20年でもうける。それで育児・家事で漱石の下に集まる人たちは引きも切らず、漱石は絶えず胃痛に悩まされ作家活動で精神状態も不安定で漱石と妻は普通の夫婦のような安らぎを得ることは少なかった。癇癪を起すと妻だけでなく子供にまで手をあげる漱石だったが潔癖で約束をまもり、集まってくる人には優しい作家であった。

(妻は心通わぬと思っていたようだが漱石は妻をしっかり見ていて評価もしていたように思う。結婚も楽天的な妻を見込んで自分にないものを見ていたのかもしれない。)

☆☆☆

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