井上荒野『赤へ』を読む。

井上荒野作品。名前がいいのかなあ。10篇の短編を収録。

『赤へ』

「虫の息」は相手のことを虫の息だと言える高齢のふたりの仲のいいお婆さんが市民体育館でバイトの子たちをからかう話。「時計」は双子の姉妹が子供のころ一人を押してひとり死んでしまう。親は隠してきたのだが事実を知ってる別荘の料理人を解雇する話。「逃げる」は浮気してた男の妻が通り魔事件で殺害される。男は愛人への熱も冷める話。「ドア」は香津美が勤めているスナックにくるお客たちの話。サムというイケメンが来なくなって手がかりに自宅を訪問するとサムは自死していた。

「ボトルシップ」は小説家の家に花束を持ってきた男。ガンで死んだ同級生に頼まれて。「赤へ」は自死で死んだ妻の老いた母の施設入所を手伝う男の話。「どこか庭で」は庭に花をと思っていた妻がそんな庭のブログを見ていたがそのブロガーはガンで。

「十三人目の行方不明者」は牧場に同級生の妻を雇っていたのだがその同級生は災害時から行方不明。帰ってきたと思ったら暴力的な人たちに殺された。その妻への熱も冷めていく。「母のこと」は肝臓がんを患いすい臓がんも見つかって「よかったわ。」という母を看取る話。「雨」は同じマンションにいた同級生の女の子が自死した。いじめだという噂。母が娘のラインを覗いたら「うける」と。自分の娘も関わっていた。

(いじめで自死するのが社会問題になっている。「雨」はそんなテーマだ。)

☆☆☆