青山文平『泳ぐ者』を読む。

青山文平作品。「半席」につづく第2弾という。徒目付の片岡直人が御用と言われる事件を担当して「なぜ」事件は起きたのか、なぜ犯人はそうしなければならなかったのかを掘り下げる話。今回は3年前に離婚した元妻が身体の不自由になって寝たきりの夫を刺殺したとした事件と願掛けに大川を往復して毎日泳いで渡る男が渡り終えたところで徒目付に殺害される事件の何故を解き明かす。

『泳ぐ者』

片岡家を立てるべく15歳のころから努力して徒目付になった片岡直人。直人には内藤雅之という上司がいた。よく食事をしながら御用の心得を指導されて「なぜ」ということに集中するようにしていた。68歳の家督を息子に譲った身体の不自由な勘定組頭の男が3年半前に離縁していた妻に刺殺された。新潟の百姓から江戸にきて身を立て努力して勘定組頭になり上席の嫁をもらった。夫婦仲・母子なかはよくなく息子は母らしい愛情を注がれたこともなく「かわいそうな人」という思いで大人になるまで暮らしてきた。

それが離縁した母が何故。父は離縁した理由は一緒を墓に入れたくなかったからという。母の姉は旗本の上席に嫁ぎ、姉の結婚に自分がなるはずであったと思っていたという。取り調べにたいして母はひとりで死ぬのは寂しかったという。どういうことなのか。もう一つの事件は蓑吉というやっと古着屋で成功して弟に徒目付の席を買い与えたのに何故かいじめ殺された。そんな時蓑吉は大川を毎日往復泳ぎ渡って願をかけていた。その泳ぐ様子をみていた直人。その目の前で蓑吉は切り殺された。その時蓑吉は死ぬ時に微笑んだように見えた。何故なのだろうと直人は長崎へ海防の仕事の途中で蓑吉の生まれ育った東三河の地を訪れる。蓑吉の育ちは悲劇的なものであった。

(青山作品にしてはこれまでよりはちょっと難解。御用以外を取り巻く食事とかの雰囲気はいい感じだ。)

☆☆☆

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