宮部みゆき『三鬼』を読む。

宮部みゆき作品。(三島屋変調百物語四之続)とあるとおり宮部文学の怪談もので三島屋の姪のおちかが奇談・怪談を聞く話である。4話の変わった話が収録されている。

聞いて聞き捨て・語って語り捨ての約束だけがある560頁を超える長大な本である。

『三鬼』(三島屋変調百物語四之続)

第1話は(迷いの旅籠)と題された3つの村で行われる行燈祭は豊作を願う祭りなのだが殿様の娘が亡くなって喪のために今年は中止にとのお達し。なんとか静かに開催したい村人たちが名主の死んだ親の隠居家をつかって代替しようと。村に立ち寄った絵師は娘と妻を亡くしてなんとか死者と生者が行き来できることができないかと思っていた。

絵師は隠居家に村の自然や村人たちの生活を大きな行燈にして描いて「迷いの旅籠」とすると村で亡くなって気持ちの残る亡者たちが訪ねてきた。これでは亡者も生者も救われるわけではないと亡者を説得して外に押し出して次の日にすべてを燃やしてしまう。

その経緯を江戸に名主についてきた12歳の村の娘がおちかに語るという設定だ。

第2話「食客ひだる神」の話は旅の途中で背中についた行倒れの亡者。道々自分が食べた分を亡者もそれに寄生するようにして旅を続けた飯屋の主人が商売繁盛はひだる神のおかげと感謝しているのだが店の建物が傾きだした。それはひだる神が食べて太り過ぎて重くなったためだった。これではいけないと店を休業して神を痩せるように・・・。

第3話「三鬼」は男まさりの妹を持つ藩勤めの武士が妹が狼藉されたのを成敗した結果遠い山林の僻地の山番役人として飛ばされる。そこは閉鎖された行き場のないものたちの最終地だった。村から出られず役に立たなくなった老人や赤子は口減らしをするのが慣習となっていた。そんな改善もしようとしない藩だったから取り潰しになった。武士は僻地の村でみた口減らしは鬼のしわざとしていたのだが鬼ではなく自分たちの心だと。その鬼の話をおちかに聞いてもらうのだがその翌日武士は腹を切った。

第4話「おくらさま」は香具屋のむすめだったという老女が三島屋の語りに来るのだが生者か亡者か夢うつつだったおちかたちは調べようとする話。

(56頁で宮部作品はかなり複雑に入り組んでいてあらすじを覚えるのも大変だった。)

☆☆☆

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