大好きな作家 熊谷達也の「鮪立の海」(しびたちのうみ)を読んだ。
大好きな作家 吉田修一とは逆の作風の作家だと思う。
吉田は都会派、熊谷は地方派という感覚である。
東北地方の会話文もすっきり胸にひびく。
「鮪立の海」は おなじみ 仙河海町の戦前から戦後のの船乗りの話。
主人公 菊田守一は洋徳丸に乗る船頭の父とその船で働く9歳上の兄に
あこがれてカツオ・マグロ漁にのる。
順調だった漁も太平洋戦争を期に漁師もまた戦争に巻き込まれていく。
軍隊の徴用船として海の監視船の役目を負わされ、ついには
敵の潜水艦と戦闘機の襲撃に遭う。迎え撃つも船は沈没。
(この場面は圧巻である)負傷した兄を背負い沈没してゆく船に
つかまって海上を漂うがついに兄は力つき守一ひとり助かる。
戦後は担ぎ屋など苦労をして、恋をして、友情に助けられ、結婚し
マグロの遠洋漁業の船長にまでなる話。
戦争は軍人だけでなく港町の漁師たちをも翻弄したという小説。
読みやすく、戦前から戦後の漁船の歴史みたいなものも見えて
面白く一気に読めた。
