鏑木蓮『思い出探偵』を読む。

鏑木蓮作品。「疑薬」に続いて読むのは2作目だ。この本は元刑事が探偵社を作るのだが単に人探しとかいうのではなく思い出を探す探偵だ。ひと・もの・ことを探して人の役にたちたいと。420頁の長編のなかに4件の思い出を探す事案が描かれる。

『思い出探偵』

思い出探偵社は敏腕刑事だった浩二郎は息子を湖で事件か事故か自殺か不明の不慮の死で失いそのために妻が精神を病みアルコール中毒になって退職して人のためにと設立。

離婚して娘ひとりを養う元看護士の由美。俳優志望の雄高。両親を殺人事件で失った佳菜子。と曰くのある優しい人たちで仕事をしている。ひったくりを助けた婦人で20年も寝たきり状態の息子を介護しているという。それで人の役にたちたいと。

「温かな文字を書く男」の事案では愛猫の死で落ち込んでた婦人が愛猫の思い出を入れたペンダントを落として困っていると近くの喫茶店に届けられてた。その人にお礼を是非したいので探して欲しいと。「鶴を折る女」の事案では工務店を息子に譲った男が43年前に集団就職ででてきて辞めようと思っていた時に偶然であった女性にジャズ喫茶で諭されて立ち直り今があるのはその女性のおかげとその女性にお礼を一言いいたいと。手がかりは折り鶴と歌の歌詞のような紙切れ。

「嘘をつく男」の事案は佳菜子がひとりの時に車椅子できた若い男に騙されて連れ出され殺されかける話。若い男は佳菜子のストーカーだった男で有名画家の息子だ。

少女椿のゆめ」は息子を勘当して一人住まいのおばあちゃん。瀕死の病気だ。

戦後の闇市のころに少年のおかげで米兵から救われたという。少年を探して欲しいと。手がかりは側に落ちていたお守りだけ。

(思い出探偵というのは発想が面白い。浩二郎の人柄に集まった人たちが思い出を訪ねる人たちをサポートする。息子の死も実は自殺ではなく少女を救うために命をかけたというオマケも。)

☆☆☆