澤田瞳子作品。サブタイトルに東海道浮世がたりとあるように東海道の街道での庶民の出来事を小話12編をまとめた本。短編だけに読みやすく人情が描かれてる。
『関越えの夜』(東海道浮世がたり)
「忠助の銭」は店に忠義ものの忠助が掛け取りの帰りに大金を失い死をも覚悟する。
「通夜の支度」は大店の娘が側室に乞われて、忠義者の手代と心中旅に出る話。
「やらずの雪」は道場の師範代もつとめた男が出家した。理由は妻と弟の不倫。
「関越えの夜」は一膳飯屋に引き取られた小娘が旅人の荷物運びなどで稼ぎをしていた。関所にいた若侍に声をかけられいろいろ案内してあげるが一向に関所を越える様子がない。関所破りを見つけて突き出した。旅の理由を聞かれて実は仇討ちと・・。
「死神の松」は若い大工が年上の女郎に手玉にとられ挙句殺された。女郎とヒモは・。
「恵比寿のくれた嫁御寮」は網元の放蕩息子があばずれ女に入れあげた。親はよさそうな娘を嫁にしたのだが実はその娘はあばずれ女の身内だった・・。
「なるみ屋の客」は居酒屋で客の浪人夫婦が落ちぶれた親子がただ酒を飲む理由で涙。
「池田村川留噺」は天竜川の川止めで近隣の宿はいっぱいに。旅人狙いの護摩の灰が。
「痛むか,与茂吉」は忠義者が大店の女将の旅に付き添う。主の狙いは女将の不義。
「竹柱の先」は浪人親子が親の目の治療と江戸に奥女中に出た妻を探しに旅に出る。
妻は出世したというが偶然旅籠にそれらしき人が泊っているかも。名前を書いた竹柱を息子に見にやるのだが・・。息子は親に嘘の名を。親は諦めるのだが・・。
「二寸の傷」は姉の婚儀で闖入した男の刀で頬に二寸の傷をつけられ悲観した妹は出家するのだが姉が訪ねて来て夫のいる京に上るという。離縁の手紙を妹に託す・・・。
「床の椿」は大店の炭屋の主が急逝して娘が跡を継ぐのだが親の妾の子という男の子が葬式にきていた。娘は心情的に自分が店を継ぐとして男の子を追い払うのだがずっと心にひっかかって・・・・。
(どの作品も登場人物の微妙なこころの内や江戸人情が描かれる。竹柱の先が好きだなあ。)
☆☆☆