中村文則『悪と仮面のルール』を読む

中村作品。作家は45歳。愛知生まれの芥川賞作家。テーマに激しく迫る。会話の部分よりも思想性が強い。難しいけれど読む人にいろいろ考えさせる。面白い。

人間は殺人という行為に耐えられるのか、その後どんな行為に走るのか。

悪と仮面のルール

財閥の高齢の時に生まれた久喜文宏は11歳の時に「邪」を残すためにお前を産ませたといわれ絶対的な父の力の下で香織という養護施設から養女にした娘とともに育てられた。文宏は美しい香織と恋をし愛し最高の幸せと思える日々を送るのだが父はそんな香織にちょっかいをだす。悩み苦しんだ文宏は父を地下室に閉じ込めて殺害する。香織は家を出、文宏は殺人を犯したことに思っていた以上に苦しむことになる。

整形医を探して海外で死亡したという男の顔にそっくり整形してしまう。思いを寄せる香織の身辺を探偵に調査し香織に近づく結婚詐欺師を殺害する。「邪」として育てられた文宏には当然という思いと良心のハザマで心は揺れる。整形した顔で香織と会う機会を作るのだが香織の変わらぬ心を知るだけで普通の女性とつきあいそしてふたりで海外に行くことを選択する。

(幸福とは閉鎖だといわれた文宏だが人は温かい心に包まれているのが幸せなのではないか。そう思ったのではないか。文宏は財閥の子。お金の心配なく頭だけで生きていられるのがいいなあ。)

☆☆☆