秋山香乃『群雲に舞う鷹』を読む

秋山作品。時代小説描く女流作家。同じ小倉出の日露戦争の元帥奥保鞏(おくやすかた)の活躍を記し、同道した森鴎外田山花袋岡本綺堂を配しながら司馬遼太郎の小説にもでてくる秋山好古も描かれる。

『群雲に舞う鷹!』

日清戦争の数倍の犠牲をだした日露戦争の開戦から終戦まで奥元帥と秋山好古騎馬隊が描かれる。奥保鞏は耳が聞こえず筆談というハンデを抱えながら維新の外様というなかで軍事の能力でトップにまで登った軍人だが部下の死におののき戦後は多くを語らぬ人だったと伝える。最後の章「足元の花いちりん」でひとりの兵が子供に3通の手紙をだした後銃弾に倒れる。日ごろから男の子は自分が銃後の母を妹を家を守ると父と約束していたが父の報に学校の仲間は「万歳・万歳」と父を英雄と扱うのだが男の子には理不尽にうつる。凱旋した奥元帥と目をあわせた時睨みつけた少年に馬から下りて「すまない」と。

(死と隣り合わせの戦争で新しい小説と目論む作家。人の目という色ガラスを通して描かれる報道。列強のなかに入りたいと目論む日本。大国ロシアの思惑。そんな欲のうごめくなかで兵は死んでいく。真実とは・・。)

☆☆☆

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