#横溝正史『雪割草』を読む。

横溝正史作品。横溝といえば探偵小説だがこの本は戦中のまだ満州が景気のいい頃の薄幸の目にあった女性の話である。作家は明治35年生まれである。その意味では現在の小説とはテンポも異なるのだが昭和19年生まれの自分には戦前・戦中・戦後の匂いみたいなものも感じられてまだ理解ができる小説だ。

『雪割草』

有為子は上諏訪で愛されて育つのだが母を亡くし父が亡くなって一人になり父から本当の父は別なところにいると手紙を託されて東京へ。父の知り合いの家に逗留するのだが金も盗られひどい目に遭うがやっと会えた本当の父は著名な画家でひとり娘の活発な美奈子がいた。有為子は画家の弟子の仁吾に恋し結婚するのだが過去の不倫を根に持つ母によって仁吾の展覧会への出品作品も落選しふたりの生活は破綻し贋絵に手を染めて逮捕され出所したときには結核に侵されていて有為子の苦労がはじまる。死のうと上諏訪に行って助けてくれたのはかって実家にいた木実であった。

戦中の最中で子供と結核でプライドの高く絵も描こうとしない夫を抱えて上諏訪で保養してやっと夫が気力を取り戻す。木実も美奈子も満州の好きな人のところへ・・・・。

(木実だけが足を地につけて生きる姿が描かれていい。2018年出版の本でいろいろ解説があったが読んでいない。)

☆☆☆

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