久坂部羊『生かさず殺さず』を読む。

久坂部作品。もう久坂部作品も何冊目になるのだろう。この本は高齢者の認知症を扱い、認知症患者もまた通常の病気に罹る。脳梗塞とか前立腺がんとか肺がんとか。しかし意思疎通が十分できない、また連なる家族の意思もまちまちの場合も多い。そんな問題を扱った本。

『生かさず殺さず』

外科医として優秀だったがミスがあって外科医の疑問を感じニューギニアの研究所の行きそして日本に帰ってきて記念病院のにんにん病棟の医長に付いた三杉洋一。にんにん病棟というのは個々の病気の病棟でなく認知症患者をまとめた病棟で各科の医者が診にくる仕組みの病棟。患者本位を考える三杉は看護婦たちからの突き上げもしばしば。

また家族の事情もまちまち。そんな中でかっての同僚で小説家に転身した坂崎という小説家から認知症病棟の問題点を扱った小説で三杉をモデルに小説を描きたいから協力してくれと懇願されていろいろな事案を話して協力するのだが苦悩する医者のイメージから三杉の過去の医療事故について告発すると脅される。三杉はこれまで真面目にやってきたのだが医者には間違いやミスはつきもの。しかし脅されて苦悩するが遺族に真相を話して了解を得るのだが実は坂崎は出版社を巻き込んだ罠をいくつも仕掛けていた。

終わってみれば医療も程よい医療も必要かも。患者には生かさず殺さずも必要かもと。

(人はいつか必ず死ぬ。しかし80・90歳になっても延命治療を望む家族もいる。医者がいくら説明しても助けないのかといわれたら医者も苦悩する。そんな話だ。)

☆☆☆

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