井上荒野『綴られる愛人』を読む。

井上荒野作品。2作目。就職もままならない学生と児童作家の既婚女性とのお互いに匿名での手紙による疑似恋愛?が殺人にまで発展するのを一段高いところから眺めるような本。

『綴られる愛人』

天谷柚は作家で夫真哉は編集者。外見的にも夜の生活も仲のいい夫婦。「綴り人の会」という綴りの勉強のために会が会員同士の手紙のやり取りをするのを中継する企画があり、柚は凛子という名前で35歳を29歳と偽って、航大という就職もままならない学生が21歳を29歳と偽ってクモオという名で手紙のやり取りをするようになる。

凛子の手紙にクモオがやり取りするうちに「好きだ・逢いたい。」とエスカレート。

凛子は夫がいなければ違った生き方がと思うこともあり、ついには「殺す」ような示唆を与える。航大は上京して凛子に教わった夜に夫真哉を待ち伏せて滅多打ちに。

しかし夫は死ななかった。夫に妻柚が殺させたのではないかと疑うが・・・・・。

(妻は夫に束縛されていると思っていたが実は今回の件で夫もまた妻に束縛されてると感じているということが分かる。罪にもならずめでたしめでたしに。現在ならネットで匿名で疑似恋愛?をするのと同じだ。)

☆☆☆