朝井まかて『眩(くらら)』を読む。

朝井まかて作品。何作か読んだがこれが一番面白い。葛飾北斎が描かれるのだが焦点は北斎の娘「お栄」を中心に描くことで北斎の生涯が描かれ、生き方が描かれる。

「富岳36景」の北斎が軽妙な文章とテンポで最後まで面白い。

『眩』(くらら)

葛飾北斎は生涯で何度も雅号を変え、家を変え、時代の文人たちと交わり「北斎親父」として絵を描くことに執着して他のことには頓着しなかった人だった。妻の「小兎」と娘「お栄」と弟子たちによって支えられて90歳まで生きた。「お栄」は一度同じ絵師と結婚したのだが嫌気がさして家に戻り、親父のところに時々顔を出す同じ絵師で戯作者の絵を描くのは「いい女を抱くため」と言ってはばからない善太郎に恋し、話もあって頼りにしている。北斎とお栄にとっての苦労は北斎の孫時太郎。子供のころから甘やかした結果か悪童と付き合いお金を巻き上げられ大きくなってからも借金を重ねてその尻ぬぐいを北斎・お栄がすることであった。お栄の後年は江戸の火事や大きな地震で苦労しているお栄を武家に養子にいって出世した弟の家に乞われて行くことになるのだが

自由に絵を描ける道に歩みだす。

北斎は俺が70になる前に描いたものなんか取るに足らねえといい。この世は生き残ったものが勝ちだ、その分修業が続けられる。といったという。元気に長生きしてなにかを目指すことができればいいが・・・。)

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