河治和香『松浦武四郎一代』を読む。

河治和香作品。初めての作家。東京葛飾生まれ。日大芸術学部卒。61歳。時代小説作家。300頁なのだが松浦は交友関係が広く親戚関係も多くまた人間的にも「がいなもん」であっただけにエピソードも多く結構読むのに時間がかかった。アイヌの人々に優しく接したのが伝わる。がいなもんとは出身地伊勢の方言で途方もないとかとんでもないという意という。

松浦武四郎一代・がいなもん』

北海道の命名で有名な松浦武四郎の一代記なのだが絵師河鍋暁斎の娘の豊が聞き役で松浦の一代記が綴られてる。松浦は旅行家とか探検家とかとともにに蒐集家であったという。古銭とか古いものいろいろ。蝦夷地を歩いてアイヌの人々から話を聞き、地図を書きそれを幕府に進言することをライフワークにして伊勢の親友富豪の川喜田崎之助の援助を受けながら大成したようだ。とにかく当時松前藩による運上請負人制度でアイヌへの虐待や搾取などに唯一心痛めた和人であったようで幕府への建議などももともとアイヌが住む地域に和人が押しかけ文字がないというだけでアイヌたちを下に見る姿勢に現状を正しく見るようにというものだったようだ。いまでは地名表記はすべて漢字になっているが松浦はひらがな表記でアイヌの言うままに地図に記入しているのを見てもアイヌにいかに寄り添っていたか。死ぬまで「がいなもん」で生きた松浦武四郎はやっぱり素晴らしい人だった。北海道の命名のエピソードも松浦らしく面白い。

(絵師・版画師・西郷や竜馬の幕末の志士・荷風のような小説家とにかく交友親戚関係は広かったらしい。「山登りは辛いけれど登った者しか見えない景色がある。いい眺めを堪能するためにゆっくり山を下りたいと思う。」と言ったという。そうありたい。)

☆☆☆