乙川優三郎『露の玉垣』を読む。

乙川作品。読むのは2作目。新潟県新発田藩の家老だった人のご子孫から資料を受けて小説にした作品。新発田藩の家老も務めた人が藩の下級武士の系譜・できごとも藩史として書き残した。「露の玉垣」と題した藩史。史料に比較的忠実に残しているので読み手としては結構人間関係が見えず読むのに苦労した。前回の短編の方が読みやすい。

『露の玉垣

新発田藩は河川が多く洪水や日照りなど水田での収入が主で天気に左右されて藩の収支は大変だった。溝口家の半兵衛は家柄は藩主の傍系でいいのだが藩史を記載する仕事についていたが藩の窮乏で家老に抜擢される。藩史も下級武士まで含めた全体を描かなければ藩史とはなりえないと完成させる。その中から8篇のできごとを描く。

四郎衛門の家で蔵で仕事をしていた下男が火を出して風にあおられて大火になった話。

吉右衛門が養子に出る前の下僕のころお世話になったかっての奥様を見舞う話。

清左衛門は若い時と違って山庄というばりばり仕事をこなす相手をみて気弱に思う話。

江戸中期の武家は離縁・養子が頻繁だったから実の弟と夫の弟が藩主の国に戻るための手配方の仕事を一緒にすることに。乱心から実の弟が夫の弟に殺された。どちらも優しい男であった。どちらの妻も夫も親も連なる人々が戸惑う話。などなど。

(とにかく武士の窮状も大変なものであった。江戸勤めもお金がかかった。洪水で堤防が壊れることも度々で心休まることがない武士と女たちの日常が描かれる。)

☆☆☆