青山文平『江戸染まぬ』を読む。

青山文平作。青山氏の時代物の作品はじんわり優しさが伝わってくる。図書館の中では比較的新刊だろう。青山作品はこれで10冊目。

『江戸染まぬ』7編の短編を収録されてる。

「つぎつぎ小袖」は疱瘡などの流行り病を避けるために7人に継ぎはぎの娘への小袖を縫ってもらって着ると病が寄ってこないという。夫のために高価な書籍を買い与えた。そのために継ぎはぎ小袖を頼む人に不義理をしてしまった。借金を断わらざるを得なかったのだ。書籍は好きな夫への恋文なのだと慰める。

「町になかったもの」は飛脚問屋が出店すると町は栄える。丈夫な養蚕紙を作って大きな店にした晋平だが江戸へ出る用事ができた。書肆を覗いているうちに興味のある本に出会いまだ町にない書肆の店を出して紙問屋は弟にゆずってしまう話。

「剣士」は厄介叔父と呼ばれる幕臣の甥の厄介になって生活するの男がいた。近所にも同じ境遇の男がいる。共に若いころには強い剣士であった。家ではよくしてくれるのだがなんとか面倒をかけずに身を処したいと。ふたりの厄介叔父は決闘で身を処すことに。「いたずら書き」はお小姓に藩主から幕府の目安箱に文を投書するよう頼まれるのだがその内容を読むと競争相手の藩主の悪口。これでは投書できないと自宅で焼く。

それを見たこどもは紙は焼かずに古紙にというのだが・・・・・。

「江戸染まぬ」は故郷から出て食うために一季奉公してる男が老公の手がついて子ができた女中の里帰りの護衛を頼まれる。10両で追い払われるのは可哀想と番屋に届出しようかと思い悩みつつ故郷近くまで来た時男と女の関係ができた途端に女に腹をさされる。好きだった老公の醜聞が伝わることが忍びなかったのだ・・・・・・。

日和山」は武家の次男坊が養子の口が決まったと思ったら隠居の父が書写を楽しみにしてたのだがそれが法に触れると一家で追放に・・・・・・・・・。

「台」は武家の居候の次男坊が一念発起して昌平黌に入学して海防掛という職についた。祖父は何に使うか知らぬ台をつくった。愛老妻の手水を手伝う台だという・・。

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