須賀しのぶ「革命前夜」を読む。

須賀しのぶ作品。須賀作品らしい海外のスケールの大きい難題を描く。バッハに心酔して東ベルリンに留学した間山青年。ベルリンの壁崩壊前のまさに革命前夜を描く。

音楽音痴でクラッシック音楽に知識がないから読むのに骨が折れたが人は2種類しかいない「密告する人としない人」という国の異常さなど本としては面白い。

『革命前夜』

ピアノを学びたくてバッハの本場東ベルリンの音楽学校に留学した間山。音を追求する人たちに交じって勉強する。ヴェンツェルという天才的なバイオリン奏者。親切なイェンツという友もできた。教会での女性オルガン奏者クリスタの演奏にひかれる間山。東ベルリンは監視者とそれに従う密告者が多く、西側に亡命や出国希望の人が後を絶たない。クリスタも西に移住申請しているのだが当局から目を付けられ不自由している。ハンガリーオーストリアの国境を開放するというので脱出する人で溢れた。ヴェンツェルとクリスタの合奏の際に二人は結婚すると宣言し間山は苦悩するのだが実はふたりはクリスタの西側渡航のための偽装だったが直後にヴェンツェルは何者かに刺されて瀕死で指もやられてバイオリン奏が不能に。それでもクリスタは西側に逃れるのだが会いにいった間山の前でクリスタも襲撃される。自由に国を行き来できる日本人、東ベルリンという灰色の監視社会で社会を変えようとする人々、自由を得ようと西側に脱出を試みる人たち。そんな中でベルリンの壁が破られた。

(人の区別が密告する人としない人というどちらかだという疑心暗鬼を生む社会。子がいるのに妻が西側に行きたくて不倫してそれを告発する夫。そんな悲劇まで生まれる国や社会があったということは衝撃だ。今もロシアは監視社会なのかもしれないなあ。)

☆☆☆☆