赤江瀑『霧ホテル』を読む。

赤江作品。初めて読む作家。(1933~2012)日大卒。79歳没。耽美的・伝奇的作風で京都など伝統的なものの作品が多いという。

今回の作品は伝奇的短編12編が収録されている。

『霧ホテル』

「霧ホテル」は舞台大女優が行った地方のホテルで霧が流れてきて江戸の花魁と話をしたという不思議体験を人間国宝に話したらそのホテルを探して行ったと二人の会話。

「隠れ川」は30年ぶりで由緒ある料亭を訪ねて一面に白地に1本の線が描かれた襖を見る話。川なのか蛇なのか見方によっては・・・。

「眠る劇場」は大演出家が無気力になってお手伝いさんと一緒にいるところにかっての亡くなった妻が訪ねてきて女同士ふたりで菩提樹の話などする話。

「宵宮の変」は祇園祭の山笠巡行に参加することを夢みた男が友の可愛い妹を探すが。

「夢違え詣で」は夢違観音という悪い夢を見たら観音さんに参ったらいい夢に・・。

「恭恭しき春」は若い売れっ子の美男が画壇の重鎮に枕屏風を描いてもらったが端の方に見えるか見えないかで男雛が天に上る絵が描かれていた。

「桔梗色の火のけむり」は死んだ男の火葬場で男を取り合った二人の女が話をする。

「闇の渡り」は湿地は野鳥の楽園だったのに埋め立てられた。野鳥の会の女性から渡り鳥が返ってきたというハガキが来たのだが・・。その女性は寝たきりだった・・・。

「辛紅の眠り」は伝統工芸界の俊英ふたりが東西に分かれて独り立ちした。西の男が地方の寂れた田舎で奇妙な自殺をする。真実を知るべく友は足を運ぶ・・。

「愛しき影よ」は突然人に影がなくなったら。

「星月夜の首」は空襲でなくなった町に想いでをたどっていく少年。花屋で見た花に隠された長靴が気になる。訪ねた少女は兄は持てすぎて嫌いになった女の首を切ると・。

「龍の訪れ」は日清講和条約李鴻章が泊ったお寺の山門に描かれた龍の目が・・。

(78歳という年齢は明治・大正・昭和・平成ぐらいの比較的いろんな文章や構成が一定理解できる年齢なのはラッキーなのだろう。この作家は生きてたら90歳だ。)

☆☆☆