須賀しのぶ氏長編小説。「青空白花」や「荒城に白百合ありて」に続き3作目を読破。
日本という海で囲まれた国民には考えられないドイツやロシアに囲まれたポーランドという国の悲劇、国民の4割がユダヤ系の人たち。歴史上から国名が消されたこともある国。世界大戦時の悲劇が描かれる。
『また、桜の国で』
日本でロシア人の父と日本人の母を持ち日本で生まれながら故国という感覚を持ちえないまま外務省の書記生という職業についた棚倉慎。子供のころポーランドとソ連の戦争でシベリアに送られて過酷な生活をした孤児たちが日本に連れてこられてひとときの
やすらぎの孤児院生活をおくった。その時に聴いたショパンの「革命のエチュード」とカミルという少年との出会いが慎の運命を波乱なものに変えていく。父の教えは人に真心を尽くしたら2倍になってかえってくるにというものだった。実践して生きる慎。
ポーランドの領事館に赴任した慎はこれまでの日本人がポーランドの人たちにしてきた行動が心に受け継がれていることを知る。自分も受け継いでいこうと。
ドイツ軍がワルシャワに侵攻した。自分たちの自由は自分たちで守らねばというのはポーランド市民は染みついていた。日毎に残虐無法にドイツ軍は蹂躙する。英・仏は
期待してたのに助けに来ない。ユダヤ人をはじめ多くの人が列車に乗せられて・・・。
慎・レイ(ユダヤ系米人・記者)・ヤン(ユダヤ系ドイツ人)の三人は日本で桜を見る約束で指切りげんまんをして決死のドイツ軍の中の逃避を試みるのだが・・・・。
(周りの大国に蹂躙され続けた国の話や人種問題、人間の尊厳など考えさせられた)
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