岩井圭也『文身』を読む。

岩井圭也(いわいけいや)作品。初めての作家。大阪府出身。1987年生まれ。

神童と言われた弟と言われたままにしか行動できない兄。兄弟で田舎の閉塞感から逃れようとする。作家になり文士となるのだが小説は結局誰が書いたのか。文身とは刺青のことだが・・。最後まで誰が小説を描いたのか分からない。虚構か現実か。面白い。

『文身』

須賀庸一と堅次は凡庸と言われた兄と神童と言われた弟。当然注目は弟に。堅次は田舎の決まった人生を送るのが嫌で自由になりたいと自殺を偽装して外にでる。そして私小説を描き続ける。卒業すると東京へ弟のところに。弟は私小説を描き私小説は人の人生をそのままに描くのだから兄に自分の描いた通りの人生をと要求する。売れなかった小説も兄は弟の小説のままに行動する。酒・女・殺人と。文学賞を受賞して本が売れ有名人になっていくが私小説のために弟の希望はどんどん過激になっていく。

兄は結婚し娘明日美もいて満足な家庭なのだが弟は家族の死を要求してついには惚れた妻詠子を自殺にまで追い込んで殺人文士とまでいわれる。娘はそんな父を憎悪していた。ガンで死んだ庸一は娘に「俺の葬式の喪主をやってほしい。」と。

(人間は真実に注目するしかし虚構がなかったら生きられん。虚構と共存して生きていくしかない。堅次の描く虚構に庸一が現実にして生きていく。それが真実なのか兄が弟に想いを寄せて実際は兄が小説が書いたのか・・・。弟は死んだのか・・・・)

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