あさのあつこ『たまゆら』を読む。

あさのあつこ作品。同姓同名だけれど女優ではない。列記とした作家だ。初めて読む作家。1954年生まれ・岡山出身という。ゆったりした流れのなかで繰り返しの文章がリズムを刻む。この本を読みながら好きなテレビ番組「山の中の一軒家」が絶えず頭に浮かんだ。たまゆらとはほんのわずかの間とか一瞬とはかすかにとかという意らしい。

たまゆら

花粧山という山と人のいない麓の境界に老年に差し掛かった日名子と伊久男の夫婦が住んでいる。愛し合ってる夫婦である。二人には壮絶な過去を引きずっていた。

日名子はかっての大地主の息子に見初められ結婚するも姑にいじられ夫の無関心に愛もなく過ごしていたが或る日教師であった夫が連れてきた同僚の伊久男を見た途端に「海をみた」ほどにこの人しかいないと思う。勝手に姑に耐えられないとして離婚。伊久男と結婚し幸せを感じている時元夫が突然家族を皆殺しにし日名子のもとに日本刀を持って押しかけ母親を殺害して花粧山に逃げ込み事件は犯人が捕まらないまま収束する。

日名子夫婦の家には山に登る人が立ち寄りそこから戻る人・山に登って帰る人・帰らない人それぞれに。ある日真帆子という若い女性が登ってくる。真帆子もまた好きな人のことが忘れられず逢いたかったのだ。その人は父を殺害して山に行く友に告げて行方不明だった。どうしても山に登るという娘に夫婦は自分たちの過去に区切りをつけるために一緒に登る。

その山行でお互いの過去を告白する・・・・・。

(人の犯す罪はたくさんあるけれど「男の元に走ったことを罪とは思ってはおりません。離婚の言い訳に姑をつかったこと」それが罪だと日名子は苦しんできた。真帆子はいう「(殺人などの)人はどうやったら赦されるのですか。」と。最後はちょっと。)

☆☆☆