久坂部羊『第5番』を読む

久坂部作品。552頁の長編。ガンとか腫瘍とか医者の良しあしなど我々高齢者には読むと怖い部分も多い。今のコロナ禍にも通じるところも描かれるし、日本人はお金に厳しい守銭奴のように守健奴というような部分もあると指摘する。患者自体が賢くならないとダメかも。

『第5番』

悪の象徴のような医者白神と患者のためを第1に考える医者為頼を巡っていろいろな事件が巻き起こる。白神は教師一家殺害容疑で指名手配され海外逃亡しているはずが。

日本で「カポジ肉腫」という奇病が流行したのだが診断した菅井医師の調べで新型のカポジ肉腫と判明。治療を続けるのだが菅井自身が感染してしまう。いろいろな治療をするのだが回復せずに広範に切除する結果に片手両足を切除しても進行と感染が止まらない。新型カポジ肉腫は身体のいたるところに黒色の小さなイボ状から大きなものに進行するという見た目も奇妙な形の奇病なのだが・・。白神医師は日本で事件にも巻き込まれてウイーンの診療所に勤務している。サビーネという音楽学校生が患者となるのだがモーツアルトという作曲家の音符が聞こえるという特殊な才能で精神的な病を患っているのだが治療も出来ぬまま日本からきた男にそそのかされて殺される。一方日本では奇妙な絵を描いて評判の女流画家三岸の弟子になったのは殺人事件を何度も起こしながら薬のせいとして軽い刑に収まったイバラという青年。白神医師はウイーンで医者の組織メディカーサに入会を勧められるのだがそれはあらゆる手段で医者の地位を高めることが結果として患者も救われるという考えを持つ。実は日本の「新型カポジ肉腫」の流行はメディカーサの犯行によるものだと日本に帰ってきた為頼医師は突き止めるのだがその顔役は海外逃亡から顔を整形した白神医師だった・・・・・・・・。

(新型カポジ肉腫は治療しなければ回復するが海外から輸入のヨーグルトきのこを飲むことによって身体の弱い部分に作用して治療すればするほど伝播していくという奇病。

健康オタクになるとこんなこともあるという警鐘を鳴らす。)

☆☆☆

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