伊東潤作品。時代物が多い伊東作品のなかで今回は沖縄の戦後の苦悩を描いている。
沖縄の本土復帰に向けた瀬長亀次郎の信念と警察に入って公安を担当した貞吉そして令秀という感受性の強い男の子が瀬長氏に心酔するのを見て貞吉が情報源として活用しようとする貞吉の葛藤などが描かれていて現在の沖縄の米軍基地問題を考えさせてくれる。
『琉球警察』
戦争に敗れた日本は米国によって沖縄の主権は奪われ米軍基地ができすべてのことが米国の意向によって決まる。基地のために土地の収用がはじまり沖縄の人たちの生活は一変した。基地依存の生活になり沖縄に島々から仕事を求めて集まり歓楽街ができた。
瀬長亀次郎は沖縄を沖縄の生活を取り戻そうと訴え、人民党を立ち上げて絶大の支持を得た。島出身の貞吉は仕事を求めて警察学校へ、そして琉球警察の公安を担当する。
職務は当然人民党の監視もはいり瀬長に心酔して人民党の下働きをしていた令秀に近づいて情報を得るようになる。人民党の幹部に貞吉の身分がバレてその幹部に脅されてその話を上司にすると米軍の幹部は憲兵に連絡されて脅すつもりがその幹部を殺してしまう。米軍は当時中国・ロシアの共産主義が日本にはいるのを極端に嫌っていたのだ。
貞吉と令秀との危うい信頼関係は令秀を自殺に追いやり、貞吉は瀬長を守るために命を張る。
(昭和30年ごろの沖縄本土復帰前の米軍による基地化がもたらす沖縄の実情と沖縄の人たちの安全・安定をもたらしたいという思いをもちながらも権限は米軍という琉球警察の抱える苦悩などが貞吉を通して描かれる。沖縄基地問題を改めて考えさせられる)
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