木下昌輝『金剛の塔』を読む。

木下昌輝作品。1974年生まれ。奈良県出身。近畿大卒。夏目漱石・猫・五重塔・心柱・スカイツリーと連想れる作品。

『金剛の塔』

朝鮮から仏教とともに造寺工・造仏工などが渡来した。何百年にわたっても地震に耐える五重塔をつくるために日本独自の工法を編み出した造寺工の魂剛組という代々技術を伝えた正大工・権大工の話。大阪の四天王寺五重塔は度々火災にあって焼失したがそのたびにその時代時代の魂剛組の大工たちが再建した逸話が7話にわたって描かれる。

時代を超えて大工たちにヒントを与えたのは聖徳太子スカイツリーのついたストラップ。危機的な時にストラップが夢に現れて助けるという場面がでてくる。

五重塔で重要な役割を果たしていると思われる「心柱」の構造は五重塔から現代のスカイツリーに繋がっているという。しかしはっきりした「心柱」の役割というのは解明されていないという不思議がこの小説を面白くしている。

聖徳太子はいまだに実際にいたのかどうかも疑義が持たれているがここでは初めて仏教に帰依した善信尼という尼ではないかという説も面白い。漱石の猫もでてくる。)

☆☆☆