久坂部羊『介護士K』を読む。

久坂部羊作品。医学出身の作家が介護施設における介護士の過酷な仕事と虐待や命や安楽死についてミステリー風に仕上げた作品。

介護士K』

介護施設で働く小柳恭平介護士のところで女性利用者が2人3階か落ちて死亡する事故が連続しておき、続いて男性利用者がベッド脇の柵に頭を入れて死亡する事故が起きる。

落下事故のどちらの日にも恭平は当直業務をしていた。老人たちは日ごろから死にたいと漏らしていた。自殺か事故か殺人か。恭平はいい男で仕事も優しく接する介護士だが周りからは変人とか虚言があるとか言われていた。恭平は大好きな姉とふたり暮らしで姉には実業家の恋人がいるのだが恭平は交際を許さなかった。両親が離婚し母はガンで死んでいて別れた父を嫌悪していた。そんな環境が性格を作ったようだった。

フリーター・週刊誌はこの連続の死亡事故について恭平を疑い、執拗に調べていたが目撃者がいないため殺人と決められずにいたのだが・・・・・。

施設に定期で診察にくる黒原医師に恭平は影響はされるのだが「苦しい状態で生きるより死んだほうがいい人間が厳然として存在する。底の浅いヒューマニズムや理想主義で否定しても意味はない。」

(施設で働く介護者も感情を持つ人間で施設での虐待は後を絶たない。ひどい!というのは簡単だけど根は深い。施設入居者にはいろんな人が家族から拒絶されて入居しているのだ。入居者も介護士も家族も満足できる施設はどうしたらできるのだろう。)

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