澤田瞳子作品。初めて先日読んだ「与楽の飯」は東大寺建立の炊屋の話だったが一人の作家の1冊では評価できないのでもう1冊読むことにした。この本も南都の興福寺や東大寺の平家が隆盛にまかせて南都を勢力を削ごうとして興福寺などを焼き討ちする話。
そのなかで同じ身内でも権力を持つものと持たないものの葛藤などが描かれる。
『龍華記』
摂関家に生まれながら信円は寺の院主となり従兄は興福寺の僧となった範長。
平家が南都の寺勢力を削ごうと派遣した検非違使を阻止しようと範長が新任の検非違使を殺害する。怒った平家は大軍をひきいて興福寺や東大寺など主だった寺を焼き払う。
再興の任につく信円。現場の作業につく範長。南都焼き払いの時に難を受けた子供たちを平家の大将重衡の養女公子が生活の手助けしていることをしり範長は援助するのだが
平家は没落。寺僧たちは子供たちを襲う。平家の重衡は捉えられて信円の指示で処刑することになるのだがその役目が範長に・・・・・・・。
身内の従兄同士の葛藤・南都の寺々の喪失・寺僧の戦いがえがかれるのだが釈迦の教えの怨みは怨みを棄てることによってのみ消えるという言葉に生きる範長だった。
米国の大統領選で分断といわれる。まさに怨みは怨みをすてることでしか救われない。
☆☆☆