伊東潤『真実の航跡』を読む。

伊東潤作品。時代物の小説を多数執筆しているのだがこれは第2次大戦後の戦犯裁判の話。戦勝国が軍事裁判をする中でなんとか法の正義を守ろうと戦う弁護士の話だ。

『真実の航跡』

香港での戦勝国英国が裁判長を務める「ダートマス・ケース」。戦況が苦境になってきたころボルネオ島付近で起きた商船を拿捕して戦利品の活用を考えた海軍。「久慈」艦長乾大佐はダートマス号を襲い沈没させ逃げた船員100余名を捕虜にするのだが命令は役立つ以外の捕虜は「処分」せよとの命令であった。司令官五十嵐中将は拿捕もできずに捕虜100余名を連れ帰った乾艦長に苦悩するのだが収容所への指示を聞く間もなく乾艦長は出航して途中で困った艦長は69名を甲板で処分するよう指示し実行される。

この「ダートマス・ケース」といわれる五十嵐中将と乾大佐を被告とする戦犯裁判が

開催され日本から鮫島弁護士を中将を河合弁護士が乾大佐を弁護をする。

鮫島弁護士は軍人として人格・能力の高い中将の死刑阻止のためにあらゆる手を尽くす。このころの裁判は誰かが死刑にならなければ収まりのつかない状況であり、最初から中将は覚悟もし誰に聞いても死刑といわれるなかで鮫島弁護士は一生懸命に弁護。

結果は死刑であったが五十嵐被告は日本の将来に鮫島弁護士のような若者への希望を見出しながら絞首台に上がっていく。

(戦犯裁判を読む機会があってよかった。可能性が小さくても全力を尽くすことの大切さが伝わった。彼等がいて今の日本の発展があることに感動する。)

☆☆☆

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