花村萬月作品。「ひはえつきる」と読む。花村作品らしい本だと思う。
男と女の凄惨な愛というか愛欲というか女のさがというかそんな短編を連ねている。
男女の愛がおわり日蝕で暗くなった後で日が昇っても見ることができない。
「千代」「吉弥」「長十郎」「登勢」「次二」の人たちの悲哀だ。
『日蝕えつきる』
「千代」は浅間の噴火の地から飯炊き女として江戸でてきて桝目という客引きの
もとで男をあてがわれる生活で唐瘡(梅毒)に罹る。酷くなって桝目にうつして
自殺する話。「吉弥」は陰間の話。舞台に上がって将来は白粉屋をやりたいと
夢を持つ少年が陰間としてしこまれて最初の客に身体を壊されて悲劇が・・。
恨みを抱えて井戸に入る。
「長十郎」はえばるしか能のない浪人が妻の干菓子を売ると称して寺などで
操を売って生活をえていたのだが長屋の隣の博打うちの新三という男に素性を
知られ脅されて身体をゆるしたら妻のほうが夢中になって仕事もままならず、
長十郎と喧嘩になって妻を殺してしまう。生きる糧もなく切腹しようと・・・。
「登勢」は八丈島に優男の僧侶が島流しでやってくる。性格も顔にも自信の
ない登勢が流人小屋の僧侶に夢中になって妊娠してしまう。老父も死に
つれない僧侶はおろせといわれ夜中にひとりで堕胎を行うが・・・・・。
「次二」は東北の大飢饉でやっと生き延びて江戸にきたら冤罪で捕まって
しまう。牢にいれられ過酷な取り調べを受けてやさしかったのは牢名主で
頭をなでられながら死んでしまう話。
☆☆☆☆