犬飼六岐『無双十文字槍』を読む。

犬飼作品。58歳。大阪出身。時代物を描く注目の作家といわれる。この作家を読むのは5冊目。主人公が特徴的に描かれるから分かりやすい。9編の短編が収録。

8編までは不覚という槍の腕のいい荒れ果てた寺のでっかい住持が主人公。最後の「淫虫」だけは不覚は出てこない。

『無双十文字槍』(鬼坊主末法帖)

「相対死」は不覚の荒れ寺に男と女の死体が入った長持ちが持ち込まれた。心中といって持ち込まれたものが実は盗賊の襲った店の奉公人だった。

「用心棒」は菓子屋の老舗の主人に幽霊から身を守る用心棒を頼まれた。幽霊は実は女将に無理やり部屋に入れられた奉公人がそれが嫌でフラフラしたのを主人が幽霊と。

姫街道」は不覚は背中に女・左手に錫杖と手負いの男を抱えて逃げた。女は実はある藩の家老の妻。後継問題でお家騒動で襲われたものだった。

「邪剣」は辻斬りのような悲惨な事件が連続して起きた。近間の3つの剣術道場の争いか?実は門弟の中の身体に僻みがあった男の仕業であった。

「人部薬」は子供はいなくなった。寅年生まれの子だった。人を殺したり死者から人の部位を薬にするという話がある。

「帰郷」は料理茶屋の主が女中に狐憑きを取ってほしいと不覚のところに。狐憑きの女中は主に取り込まれて妊娠して堕胎薬を飲んだ結果だった。

「兄弟子」は藩御用の廻船問屋の番頭が襲われて不覚が助けた。身の引き渡しを求めたのはかって不覚と槍を共に学んだ兄弟子だった。不覚は助けた男を守った。

「女地獄」は紙問屋の主が酒を飲んで目が覚めたら身体を括りつけられ障子を開けたら天井から針が。娘が開けて主は死んだ。気鬱でなった娘を寺で預かった。犯人は?

「淫虫」は村に医者が流れ着いた。医者は村の娘や嫁を手当たりに関係を持つことができた。鹿蔵に村人はなんとかしてくれと泣きついた。医者がいうには女から・・・。

(不覚は鬼坊主・蛸坊主などと言われてるが顔に似合わず人情と理とを持ち槍が強くて瓦版売りの佐一とのコンビで難題を解決していく。)

☆☆☆