小山田浩子『工場』を読む。

小山田作品。デビュー作で新潮新人賞をとった作品という。2014年には芥川賞を受賞。1983年の広島生まれで広島大学卒業でカープフアンという。生粋の広島っ子。

この本には「工場」「ディスカス忌」「いこぼれのむし」の3編が収録されてる。

「工場」はこれまでの小説とは異なる感じ。暗い油絵で描いた風景の抽象画のような感覚で読んだ。なにしろ街全体が工場でそこに働く契約社員だったりパートさんだったりが描かれるのだがその中で働く人がうごめいている感覚かなあ。よく分からないけど。

『工場』

大学を卒業後あちこちで働いては辞めていた牛山佳子が工場の正社員のつもりで面接に行ったら契約社員ということで採用された。与えられた仕事は書類のシュレッダーだった。一方古笛は大学のコケの研究をしていたのだけれど教授から工場を紹介されて正社員に採用された。仕事は工場の屋上の緑化事業という。部下もなく適当に自分でやってほしいといわれる。誰も指示されることもなく家も与えられる。することがないから職員の家族を呼んで(コケ観察会)を開催するがそこで子供の工場の生き物観察のレポートを読まされる。(灰色ヌートリア)(洗濯機トカゲ)(工場ウ)工場の外れの川口に全身が真っ黒のウがたくさんいる。卵を産んで増えるわけでもよそから飛んできて増えるわけでなさそうで巣があるわけでもない。いつの間にか黒いウに・・・・・。

(なんか働いている人々がヌートリアだったりトカゲであったり真っ黒い立ちんぼのウであったりそんなことを連想させるある意味怖い小説。慣れないから時間かかった。)

他の短編も会社に働く女性たちの話で「工場」にちょっと明るく色をつけたような作品。

☆☆☆

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