逢坂冬馬『歌われなかった海賊へ』を読む

逢坂冬馬(あいさかとうま)作品。1985年埼玉生まれ、明治学院大卒。「同志少女よ敵を撃て」で本屋大賞や高校生直木賞を得て有名に。この作品もナチドイツに「エーデルヴァイス海賊団」という自由な仲間4人で敢然と行動した少年少女たちの話。

登場人物もドイツ名なだけにしかもドイツのナチ体制の下での話だから重く・時間もかかったが読ませる。それにしても今問題のイスラエルユダヤ人はなぜ狙われたのか?

『歌われなかった海賊へ』

ナチの大佐の娘のエルフリーデの作った歌が象徴的。

”私たちのいるここは とても広くて狭い海 私があなたを見るときは あなたが私を見ている 波間に舟が揺れるとき 波が世界を揺らすとき 舟が波を起こすなら それも世界を揺らす波 舟の舳先は世界を割って 私はどこまでも行ける 舟の舳先に花を置いて エーデルヴァイスは倒れない エーデルヴァイスは挫けない”

彼女とヴェルナーとレオンハルトとドクトルは鉄道敷設の先に何かとてつもないものがあるのではと調べようと行動を起こす。当時ワンダーフォーゲルという野山を動き回る流行もあって監視の厳しいナチ体制下に夜に行動する。そこで見たものは貨物列車に運ばれてくるユダヤ人や同性愛や反体制者など収容者の過酷な姿であった。

連合軍が攻撃を強め終戦間際の頃だった。海賊団は列車を止めるべくトンネルと鉄橋を米軍が落とした不発弾を活用して爆破しようと計画し実行する・・・・・。

ナチ体制の下でも市民は保身と見て見ぬふりは起こる。仲間に入った少年が戦後声を上げるも海賊団の英雄的行動は抹殺され続けていく・・・・・・。

(残念ながらナチに捕まったレオンハルトとドクトルはエルフリーデやヴェルナーの市民に呼び掛けて救命をはかろうとするも間に合わずに死刑になる・・・。)

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