澤田瞳子『落花』を読む。

澤田作品。400頁の長編。歴史で学んだ平将門の乱を題材にした将門の人間性

坂東地方の混沌とした様子と京から音楽の至誠の音を求めて関東に出てきた僧侶主従の葛藤が描かれる作品。史料を駆使した重厚な作品に見える。

『落花』

天皇に繋がる家の長子に生まれながら父から仁和寺に追いやられた寛朝は各種楽器の素養もさることながら京では梵唄の名手と言われた。一度聴いた豊原是緒(心慶)の梵唄に憧れ坂東にいるという噂をもとに弟子入りしたいと下人千歳を連れて坂東に向かう。

千歳は下人の身でありながら琵琶の名手で幻の名器琵琶有明を得て京の楽人の仲間入りをしたいと熱望して寛朝の下人となったのだ。有明もまた坂東にあるという噂だ。

坂東は国司がいるのに実力主義の豪族たちが割拠している無法のようなところであった。心慶は坂東で有明を傀儡女の目のみえない(あこや)に与え傀儡女たちに琵琶を教えたり楽器を直したりしてやってるのだが寛朝には冷たかった。そんな中で平将門は「来るものは拒まず」の信念で人望もあるが一方で将門を利用しようという元役人たちも寄ってきた。頼まれるままに戦を仕掛けてどんどん勢力を拡大していくのだが・・・。寛朝たちは無法に勢力を拡大すると京から反乱の疑いで追捕使がくると諫めるのだが聴きいれず拡大していく。ちょっとした負け戦さから兵力は離れていきついには平貞盛藤原秀郷の軍に敗れる。寛朝は心慶の弟子入りはならなかったが坂東地方の生きる力や将門の戦模様から自分の梵唄を目指すようになっていた。一方有明に執着していた千歳は(あこや)を殺して有明を一旦は手にするのだが瀕死の重傷に。秀郷などは千歳を殺したほうがいいというのだが寛朝は生かすことで罰を与える道を選ぶ。

(善哉 大薩埵や耳順など辞書を引きながらの読書。間延びすることなく最後まで楽しく読めた。さすが直木賞作家。)

☆☆☆