伊東潤作品。本をこの歳76歳で読めるのは有難い。
年々孤独になっていくなかで本を読むと最低でも登場人物は5人は出てくる。
月に5冊読むとすると25人の人生と関わることができる。記憶力も落ち
て本を読んでいても覚えられないが読んでいるときは本の世界に没頭できる。
本を読む醍醐味だ。
『潮待ちの宿』
瀬戸内の港町に女郎屋あがりの伊都は旅籠を営んでいるのだがそこに
人減らしのために志鶴が働きに出される。この旅籠を中心に6篇の短編が
収録されている。「触書の男」は与三郎という男が泊まる眼付も悪い。
盗賊かと思っていると逆に宿に泊まっていた三人が盗賊で与三郎は同心だった。
「追跡者」は長岡藩の河井という武士が泊まったのだが河井を仇討ちと
狙う男が現れた。彦三郎という。長岡藩内での妬みによる陰謀だった。
「石切りの島」は旅籠のある島は石切が盛んであったが町年寄りの息子の
岡っ引きが石切場から落ちて死ぬ。町年寄り佐吉親分は疑問をもって・・・。
「迎え船」は長州藩の武士たちが戦に敗れて旅籠に逃れてくる。
傷を負ったものを介抱して迎え船を待つのだが・・・・・。
「切り放ち」は博徒と女郎の足抜けの悲恋。
「紅色の折鶴」旅籠の女将伊都が身体を壊し亡くなった後を志鶴が
あとを継ぐのだが佐吉親分の親戚の孫の美鈴の父親が偽札つくりに加担
しているのを見破るのだが・・・。志鶴は親のいなくなった美鈴を
引き取って島に残る決意をする。
☆☆☆