吉田修一「キャンセルされた街の案内」を読む。
短編小説集。10篇のいつもと違う挑戦的?な構成の 短編。
「日々の春」「零下5度」「台風一過」「深夜2時の男」 ETC
「奴ら」は電車のなかで男の痴漢に男が遭う話。面白い。
「キャンセルされた街の案内」の短編がやはり一番読ませてくれる。
長崎の軍艦島を前にした地に生まれた兄弟。兄が弟を訪ねてくる。
東京で弟は勤めながら小説を書いてる。
「きっこ」という不倫をしてる女が好きになり、その女の母に
によくしてもらうという話を。最後はその母は万引きで捕まるのだが。
弟は子供の頃、軍艦島の案内で小遣いを稼いだことがある。
かっては5000人が暮らし、今は廃墟と化した島にいろんな人が
来たが「関心は長くは続かなかった、しばらくするとはしゃぎだし・・」
この短編のなかに他にいろんなテーマになりそうなエピソードが
たくさん詰まっていてしばしば読む手を止めて考えさせられた。
随所に作家吉田修一らしい想像と創造が文章に見えて楽しいが
いままでの吉田修一とは違ってるのも面白い。