朝井まかて『落陽』を読む。

朝井まかて作品。何冊か朝井作品を読んでいるがこの本は記者という目を通しながらも明治天皇人間性について描いたり、明治神宮の造営の由来を描いていて面白い。

『落陽』

東都タイムスという弱小新聞社は武藤という社主兼主幹の剛毅な男が経営している。勤める記者は瀬尾亮一・伊東響子・田中という前職にいろいろ曰くのあるが才能ある人たちだ。明治天皇崩御を前にして陵墓を東京にという話があったが天皇の希望で京都に。それならと渋沢や大隈などが東京に明治神宮を作ろうと画策して実現することに。

そんな話を聞きつけた瀬尾や伊東がその経緯に興味を抱いて聞き込みを始めていく。

その過程で瀬尾は明治天皇その人の人間性に、伊東は造営に必要な木々に興味をもって調べ始める。そんな時突然東都タイムスが不渡り手形で社長は雲隠れ、会社は倒産。

瀬尾はそれでも明治天皇に興味を持ち続ける。

響子は出版界に田中は教師に進むのだが武藤の行方は分かって時武藤からは「健闘を祈る」の一言であった。それでもみんな東都タイムス時代を懐かしむ。

(日本では古から天皇は国見という習慣があったという。統治するというより見守るという感覚に近いもの、それによって民衆は天皇を尊敬し崇めたというものだ。)

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