梓澤要作品を読むのは2作目だ。
どんな作家の作品でも1作だけで判断しては失礼だろう。
「方丈の弧月」は鴨長明伝である。
下鴨社の神官正禰宜の家に生まれ後継ぎと思っていたのが父の死後は
長明が幼かったこともあり他の一族に地位を取られて生涯家名を
なすことはなかった。それは長明の人と交わることが得意でなく
仕事に熱心でなく変な自尊心ばかりが目につく性格によるところも大きかった。
一方で琵琶と歌には熱心に学び琵琶は名手と言われ歌は「新古今和歌集」の
選者に選ばれるほどであった。老いて大原に小さな庵を結び己れの心の声に
耳を傾け愚かで浅はかな人生を他人のためでなく、他人に認めてもらう
ためでなく自分自身のために小文を書こうとした。それが「方丈記」である。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」で始まる。
※歳とともに長明的心境になりつつなりそうだ。