伊東潤作品の3作目。
「巨鯨の海」
太地町では江戸時代初期から鯨を獲っていたが太地角右衛門が
1600年代に綱とり漁法と刺して組創設と相まって捕鯨の一大産地となった。
沖合を先頭に1番から9番までの刃刺が乗る勢子船、勢子船には15人乗組、
獲った鯨を運ぶ持双船、樽船、道具船などが見張りの合図で一斉に動く。
300人程度が一斉に沖で出る、それに納屋衆と言われる裏方がいるから
太地の人はほとんどが捕鯨に関わっていたという。
一番の花形は刃刺でありしかし刃刺は世襲制でありいろいろな約束事が。
6編の太地での出来事がこの小説である。
(旅刃刺の仁吉)曰くがあって流れてきて刃刺になった仁吉が弱い音松を
刃刺に育てる話。
(恨み鯨)死にそうな妻をもつ徳太夫という名の刃刺が我子と鯨と闘うのだが。
(物言わぬ海)太地の子供たちが捕鯨を直に見ようと船で漕ぎだすが・・・・。
(訣別の時)優秀な刃刺の長男が鯨に首をやられ、次男が上司に楯突いて
法を破り、弱い太蔵が強くなっていく。
太地言葉で会話され、その説明も分かりやすく読み易く、5年ほど前の
作品だが捕鯨の歴史を改めて知ることができた。