桐野夏生「夜の谷を行く」を読む。
大きな鉄の塊で浅間山荘を打ち壊すニュースを思い出した。
連合赤軍の集団リンチ殺人事件に関わった女性の40年後の話である。
主人公は西田啓子。7年の服役を終えると父も母も亡くなっていた。
離婚した妹とその娘とだけ関係をもって怯えるようにひっそり生きてきた。
かっての仲間からあるライターを紹介されてから閉ざしてきた闇が
少しずつひび割れしていきかっての仲間たちがどう生きているのかに
興味が湧いていく。指導者永田洋子の獄中死もそのきっかけだった。
赤軍の総括という名のリンチは壮絶悲惨であった。
彼らは女性に子供を産ませて赤軍の兵士に育てるなんて構想もあったという。
妊娠していた金子という女性は総括という名のリンチで「子供だけでも・・・・」と
啓子に言いつつ死んでいった。そのことが獄中で子を産み里子に出した
ことを否定していたのだが。最後にライターが我が子と知ることに・・・・・。
狂暴な性格を持つ時や組織や自分の身を守ろうとするときに
総括とか反省とかを理由に下の者を追い詰めていく。その結果は悲惨だ。
よく知る事件だけに読ませる本だ。