中村文則『迷宮』を読む。

中村作品。キュウリを乱切りして塩やコショウやニンニクで味付けしたサラダのような作品。自分には味付けに分からないこともあるけれど読ませる作品。

迷宮入りした日置事件という世田谷事件を思わせるような密室とされてご夫婦と兄が殺害され妹だけが睡眠薬を飲まされて生き残って解決されていない事件に若い弁護士事務所で働く弁護士を目指す男がその事件に興味を示す話。

『迷宮』

加藤弁護士事務所に勤める新見にはRという分身がいた。誰の内面にも巣くうものだ。

所長に職員の削減を提言されても口では従うそぶりを見せながらも別行動をとるような男。日置事件で生き残った娘と知り合うことがあり日置事件と美人の娘紗奈江に興味を持つ。紗奈江から日置事件の真実は父は美人を嫁にもらってかなりの嫉妬深かかった。母は美人でいろんな恋愛をした末の諦めのような結婚だった。そのため家庭は破綻寸前だった。兄は思春期の性に目覚めて妹にはけ口を求めるような状況で兄は「出口」を求めて誰かがいなくなれば解決するのではないかという時に紗奈江の開けておいた裏口から強盗が入った。強盗は夫婦を縛って暴力をふるって出て行ったのだが兄は「出口」を求めて夫婦にナイフを向けて殺害し、兄は毒を飲んで死ぬという結末に。新見はもしかしたら兄に渡した毒は兄は望んでいたことではなかったのではないかと推理するがすべてを曖昧にしたまま紗奈江と結婚する・・・・。

(迷宮事件になったのは父が嫉妬のために窓や出口にはカメラがついていて誰も姿も映っていなかったし、窓や出口には赤ん坊しか入れないような窓が鍵がかかっていなかっただけですべてに鍵がかかっていたから。家のなかの子供たちの心が事件を迷宮に。)

☆☆☆