澤田瞳子『稚児桜』を読む。

澤田瞳子作品。この本には副題として能楽ものがたりとしているように能楽で演じられる題に澤田瞳子自身の解釈で分かりやすい短編になっていると思われる。読んでからネットで同じ題の能楽を初めて見た。なかなか能楽の良さが内容が分からないだけに大変だけれどこの本を読んで能楽に触れるとすこし分かるような気がした。

「やま巡り」(山姥)は都で曲舞の名手といわれる遊女(百万)が見習いの(児鶴)を連れて信濃善光寺に出発。途中で老婆に出会い家に招かれる。そこで百万は鬼女の曲舞をお礼に歌うというと老婆は嫌がった。実は老婆は昔子を捨てた母だった。百万はかって捨てられて山姥の里といわれたこの地で育っていた。

「子狐の剣」(小鍛冶)は葛女という刀鍛冶の娘が上達の早い弟子に惹かれ妊娠する。しかし弟子は刀を盗んで逃走する。娘は親にも言えず困っている時に刀の下命が下る。

鍛冶は相方がいないと断るのだがご下命だけに断れない。相方になりうる惚れた男を探して親方も相方にするのだが刀ができた時またまた刀を持って逃走する。

「稚児桜」(花月)は清水寺の稚児たちの話である。稚児たちの中で優秀でなんでもできる稚児(花月)のところにかって生活のために稚児にだした花月の父が探して寺にきた。今頃来た父に恨んでいた花月は稚児のなかでも優しいばかりで生活能力のない(百合若)を子供だと偽って押し付ける話。

「鮎」(国栖)は天智天皇の時代に「菟野」というスパイに入れられた女性の話。

「猟師とその妻」(善知鳥)は寺僧が越後の帰り道で陸奥の妻子に死んだと伝えてほしいと頼まれて陸奥まで足を運んだら逞しい母と子がいて自分も・・・。

「大臣の娘」(雲雀山)は右大臣藤原豊成の娘が正妻に嫌がらせを受けて乳母と一緒に家出した話。乳母の娘がでてきて正妻に脅しをかけて金品を取るのだが・・・。

「秋の扇」(斑女)は美濃国で売れっ子遊女が都の少将が置いて行った扇をたよりに都に出るのだが・・。

「照日の鏡」(葵の上)源氏物語に題材の照日という力ある巫女と醜女が姫にとりついた霊を取り除こうとする話。

(カッコ内が能楽の題名。伝統芸能というだけで能楽に馴染めないがこの本は一見。)

☆☆☆