仁志耕一郎『玉兎の望』を読む。

仁志作品。3作目。鉄砲鍛冶師国友村の藤兵衛の奮闘の話。仁志作品は会話の部分が滑らかでそれが読みやすさに繋がってるのかもしれない。読みやすく面白い。

『玉兎の望』(ぎょくとののぞみ)

藤兵衛は琵琶湖の側の国友村で弟源重郎とともに鉄砲鍛冶をやってるのだが鉄砲鍛冶にも身分制度があり幕府から決められた仕事をしても4人の年寄衆が半分、20軒近くある平鍛冶衆が半分という取り分で年寄衆は鉄砲を作ることなく取り分をとり平鍛冶衆はいつも貧しかった。仕事もでき平鍛冶衆のためをいつも考える藤兵衛だが同業の娘サヨが好きで嫁にと思っていたのだが貧しさ故に祇園に売られてしまう。彦根藩に仕事をもらってなんとか生活できる状態だったが江戸にでる機会があってその時に出会った刃物鍛冶師の金造や蘭学の顔の広い山田大圓と出会ってから注文も増え、洋物のあたらしい器具に興味もでていろいろ作るがなかでも気砲といった空気銃は注文殺到で生活を支えた。一方サヨは芸伎になっていて藤兵衛は約束通り諦めずに3度ほど身請けにいくのだが断られ彦根藩の援けでやっと嫁さんに。

(禅語で指月の指という言葉があるという。お釈迦さんが悟りは向こうにあると指さすと向こうではなく愚者は指ばかり見てるという話で指をみても何もない、指の向こうをみないとダメという話。いい話である。玉兎は藤兵衛が望遠鏡を作って見た月と若い頃サヨと二人で見た月のこと。)

☆☆☆