#久坂部羊『反社会品』を読む。

久坂部羊作品。医師であり作家である作者が医学知識を駆使した反社会的行為のおもしろさを描かれる。7編の反社会的な短編がまとめられている。

『反社会品』

「人間の屑」

よく人の口の端に人間の屑という言葉がでてくる。

寝たきりの男が頭だけはっきりして悪態をついて辛うじて生きてる。世はネオ実力主義の世となってこころで休んでいても非難される

堕落の快感・絶望の愉悦・卑屈の微苦笑。自分のダメさを嘆きつつ開き直る人間の屑。

「無脳児はバラ色の夢を見るか?」

妊娠した妻が出生前診断を受けた。結果は無脳症児の診断。夫と母と妻は産むべきか中絶すべきか悩む話。結果は赤ちゃんは死んだ。調べたら検査の間違いだった。

「占領」少子化がすすんで高齢者が多数をしめて働く若者優遇で電車なども老人優待席は逆転して若者優待席に。しかし政治に無関心な若者が多く結局は実質的に高齢者の超優遇政策がとられるという話。街の娯楽施設は高齢で元気な人であふれる・・・。

「不義の子」優秀な夫と妻にやっと妊娠した。夫は妊娠日に疑惑を感じて夫の一卵性の奔放な弟が妻と不倫ではと思う。しかし実は相手は夫と同僚の医師と・・・・。

「命の重さ」気の弱い夫が課長にそそのかされて骨髄移植のドナーになることに。

家族から非難されながらもやっとドナー登録し移植までこぎつけるのだが・・・。

「のぞき穴」10歳の子供が公園のトイレで小さな穴を見つけた。女性の性器に興味を持ち穴から隣に入る女性を覗くのだが思いと異なりがっかりして女性不信になりあきらめて勉強に励み産婦人科の医師になる。体外受精の権威となったが毎日みる性器に女性を感じなくなったのだが体外受精を成功させるための悪魔の囁きが・・。自分の精子を。

「老人の愉しみ」お金持ちの老人が愉しみもなく辛うじて人に心の中で悪態をつくことであった。医者になった息子や弁護士に嫁いだ娘に金をせびられて生きていくのが嫌になった。そんな時あらわれた本物のテレパシーができる若い女性・・・。

(さすがに医者だからのぞき穴などはリアル。ちょっと笑わせる話ばかり。)

☆☆☆

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