#澤田瞳子『夢も定かに』を読む

澤田瞳子作品。奈良の都の宮城の采女・氏女たちの権勢渦巻く後宮での生き様が描かれる作品。采女(うねめ)とは地方豪族の子女たちをいい、氏女(うじめ)とは権力者たちの子女が後宮にあがって働く女たちをいうらしい。この時代の小説は呼び名が難しくカナ振りがついていてもすぐ分からなくなるから大変。例えば登場人物のなかでは安宿媛(あすかべひめ)首(おびと)役所では膳司(かしわでのつかさ)という具合だ。

彼女たちの身に起こる事を8篇の小編をまとめた作品だ。

『夢の定かに』

「蛍の釵子(さいし)」では采女の若子が貴族に見染められたと思ったのだが実は婚約者は別にいて子供を産むための当て馬だったという話。

「錦の経巻」は筆の達つ笠女が経典書写を頼まれたのだが妬みにあって反故にされる話

「栗鼠の棲む庭」は愛人に子供を取られた春世が発起して子供に会いに行く話。

「綾一端」は漢詩を詠う大会で賞品に綾がついたのだが盗まれた話。

「藤影の猫」姫の大切な鶯が猫に取られたと大騒ぎ。

「越ゆる馬柵の」は入宮したての志斐弖が酔って暴れ馬を乗りこなしそれによって帝が彼女と深い仲になる話。

「飯盛顛末記」は春世のとられた子は実は父が違うといいがかりをつけられる話。

「姮娥孤栖」は春世が故郷に帰らされる。

(若子・笠女・春世の三人は同部屋で助け合いながら翻弄される後宮で助け合いながら生きる姿が描かれている。)

☆☆☆

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