澤田瞳子『火定』を読む

澤田瞳子作品。今コロナ禍で国民が感染の恐ろしさを感じているがこの本は奈良時代新羅に派遣された人たちが痘瘡といわれた天然痘を奈良の都に持ち帰ってしまった。

730年に皇后藤原光明子によって作られたという施薬院悲田院という今でいう病院と孤児院にまで天然痘が入り込み阿鼻叫喚の世界に・・・。

火定とは伝染病などで死んでゆく人たちはそれによって生きる人を生む尊い業火ということだろうか。生があれば死がある。死があるから生があるということか。

『火定』(かじょう)

薬院の医師「綱手」はかって天然痘に罹った生き残りで民間人のために献身的医師である。一方宮城の抱え医師だった「諸男」は上司から濡れぎぬを着せられて終身刑で牢につながれるがそこで知恵の働く「宇須」にかわいがられる。恩赦で世にでた世界は天然痘の大流行で阿鼻叫喚の世界であった。「宇須」は民の弱みに付け込んでまじない札を売りつける。民は札を買い次に天然痘の犯人捜しを始め次には手当たり次第に店壊しなどに走るようになる。天然痘は施薬院悲田院にも入り込んでしまう。川に死体は溢れ悲田院の子供たちもすべて移らないように蔵に閉じ込められたまま死んでしまう。

「諸男」たちは治療の傍ら昔の書類から天然痘を治す薬を解き明かして・・・・。

(今ある人達は過去の亡くなった人たちによって生かされた人であるということ。)

☆☆☆

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